歯周病の原因と進行

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歯周病とはどのような口腔疾患か?

軽度歯周炎

重度歯周炎

歯周病は、細菌(歯周病原菌)による感染によって、歯周組織が分解されてしまう病気です。 お口の清掃性が悪いと歯周病になる・・・と聞いたことがある人が多いのではないでしょうか。

実は、それだけが直接的な因子ではなく、細菌に対する免疫反応や組織及び骨の代謝などに対して、遺伝的な危険因子や後天的(不衛生な口腔内、食生活や喫煙など)な危険因子によって組織が分解され、歯周病の症状が引き起こされるのです。

よって、歯周病は患者様の生活背景や危険因子によって別々の問題で歯周病に罹患するため、 口腔内の環境改善だけでなく、生活習慣などを見直す必要があります。

また、歯周病は症状を感じにくい病気であるため、患者様自身が歯周病であることに気が付かないという理由で、歯科医院で治療を受けるときにはかなり進行している状態であることが多々あります。

昨今は全身疾患との関連性も報告されており、一口腔内の問題ではなくなっています。 早期発見、早期治療が何よりも大切だと言える病気が歯周病です。

歯周病の原因

バイオフィルム(プラーク)

バイオフィルム(プラーク)

歯周病の主な原因はバイオフィルム(プラーク)です。バイオフィルムは細菌の塊とイメージしていただけるとわかりやすいと思います。一般的に言われているプラークはこのバイオフィルムのて典型的な例です。

歯周病の原因と言われている歯石自体に強い歯周病原性はありませんが、バイオフィルム形成の格好の場所となるので、歯周病の発症・進行の要因となります。

このバイオフィルムですが、どんな種類の歯周病菌がいるかによってバイオフィルムの病原性は変わります。磨き残しの量が多ければ病原性が高いわけではなく、質によって変わるということが最近の歯周病でわかっているので、バイオフィルムの量ではなく質(歯周病菌の種類)が問題になります。

細菌(歯周病原菌)

細菌(歯周病原菌)

歯周病の原因となる細菌は常在菌で人間の身体に住んでいます。

その常在菌は6つにグループに分けられており、そのグループ全体をマイクロビオームと呼びます。マイクロビオームは18歳以降に完成されますが、すぐに歯周病の症状が現れるわけではなく、口腔内の清掃不良や加齢などの原因によってマイクロビオームとの共生関係が崩れることで歯周病が発生します。

マイクロビオームの中でもレッドコンプレックスと呼ばれる「P.g菌・T.f菌・T.d菌」の3種類が特に高い歯周病原性を持つということがわかっています。 その中でも特にP.g菌がバイオフィルムの中で増殖することにより、歯周組織の免疫機構を抑制させます。

そうすると、今まで免疫によって増殖や病原性を抑え込んでいた常在菌までも増殖するようになり、バイオフィルムが高病原性化してしまいます。

つまり歯周病は細菌との戦いであり、マイクロビオームと歯周組織の共生関係を改善し保つことが歯周治療や歯周病の予防には重要となります。

歯周病の知識:歯ぐきから血が出ること本当の問題

「歯ぐきから血が出ると歯周病かもしれません」

このような文言を目にしたことがあるのではないでしょうか。ではなぜ歯ぐきから血が出ることが問題なのかを説明します。

歯ぐきから血が出ること本当の問題

上皮バリアの破壊

上皮バリアというのは、身体を感染から守る初期段階の免疫システムです。 上皮バリアの代表例は皮膚ですが、粘膜を覆う上皮細胞も、人間が歯周病菌との共生状態を維持するために重要なバリアになります。

その上皮バリアがバイオフィルムの過度な蓄積や歯周細胞の抵抗性が低下するなどの要因で、歯周組織に炎症が起こると上皮バリアが破壊されてしまいます。

この上皮バリアが破壊されてしまうと出血を起こしますが、この血に含まれる鉄分を栄養として先程説明した「P.g菌」が増殖し、バイオフィルムの病原性が瞬時に高まります。

出血は自然には止まらないため、歯周病が進行していくことになります。

つまり、歯ぐきから出血するということは、免疫システムである上皮バリアが破壊されて細菌が増殖する栄養分を与えてしまっているということになります。

そのため、歯ぐきからの出血を無視してはいけないのです。

歯周病の危険因子について

歯周病の危険因子として科学的に根拠が示されているものは、大きく分けて3つに分けられます。

病因

・病原性の高い歯周病菌(菌の型)
・歯石、バイオフィルム(プラーク)
・外傷性咬合
(噛み合わせのバランスが悪い、特定の歯に集中的な負荷がかかること) 

宿主

・宿主感受性(病気のなりやすさ)
・遺伝 ・免疫、抵抗力
・歯や粘膜の解剖学的形態
・ストレス

環境

・生活習慣(飲酒・喫煙・肥満)
・糖尿病
・経済的ストレス
・精神的ストレス
・受動喫煙

歯周病の症状と分類(新分類)

これまでは歯周病の症状に併せて、慢性歯周炎・侵襲性歯周炎に分けられていましたが、2018年にアメリカ歯周病学会・ヨーロッパ歯周病連盟が歯周病をの新分類を公表しました。日本歯周病学会も2021年度より本格的に実施に移行するとのことで、このページでは新分類でご説明するとともに、患者様にわかりやすいよう旧表現の進行段階でも示します。

歯周炎のステージ(分類)

歯周炎のステージ ステージⅠ ステージⅡ ステージⅢ ステージⅣ
重症度 歯間部の最も大きなCAL 1〜2mm 3〜4mm 5mm以上 5mm以上
X線画像上の骨吸収 歯根長が1/3未満 歯根長が1/3未満 歯根長が1/3以上 歯根長が1/3以上
歯の喪失 歯周炎による喪失なし 歯周炎により4本以内の喪失 歯周炎により5本以上の喪失
複雑度 局所 ポケットの深さ4mm以内、主に水平骨吸収 ポケットの深さ5mm以内、主に水平骨吸収 ステージⅡに加え、ポケットの深さ6mm以上、中程度の歯槽堤の欠損 ステージⅢに加え、複雑な口腔機能回復治療を要する状態
範囲 それぞれのステージにおいて限局型か広汎型か、または大臼歯・切歯であるかを考慮する

※CAL=エナメル境からポケットの底までの長さ
※骨吸収=骨が溶かされること

歯周炎のグレード(進行度)

歯周炎のグレード グレードA
(遅い進行)
グレードB
(中等度の進行)
グレードC
(急速な進行)
主な基準 進行の直接の証拠 骨吸収もしくはCALの経年変化 5年以上なし 5年で2mm未満 5年で2mm以上
進行の間接的な証拠 症例の表現型 バイオフィルム蓄積は多いが、組織破壊は少ない バイオフィルム蓄積に見合った組織破壊 バイオフィルム蓄積程度以上に組織破壊されている
グレードの修飾因子 リスクファクター 喫煙 非喫煙者 喫煙者
(1日10本未満)
喫煙者
(1日10本以上)
糖尿病 血糖値正常、糖尿病の診断なし HbA1c7.0%未満の糖尿病患者 HbA1c7.0%以上の糖尿病患者

これから歯周病は、歯周炎の重症度と進行リスクにわけられ、喫煙や糖尿病といったリスクファクターを勘案して診断することになりました。まだ浸透していない表現ですので、下記に旧表現で進行状態を記載します。

歯周病の進行状態(旧分類)

軽度歯周炎

軽度歯周炎

歯肉に炎症があり、歯槽骨と呼ばれる歯を支える骨が若干吸収され、歯周ポケットの深さが4mm未満の状態です。痛みがありませんので、気付きにくいのが特徴です。

歯肉に炎症があるため、ブラッシングで血がでることがあります。

中等度歯周炎

中等度歯周炎

軽度歯周炎に比べて更に歯周ポケットが深くなり4mm〜6mm程度、50%程度歯槽骨が溶かされています。歯の動揺が認められ、硬いものが噛みにくいと感じるようになります。 ブラッシングで痛みを感じたり、歯肉からの出血があるため歯磨きをするのが辛くなります。 歯周ポケットより膿が出てくる場合もあります。

重度歯周炎

重度歯周炎

軽度歯周炎に比べて更に歯周ポケットが深くなり4mm〜6mm程度、50%程度歯槽骨が溶かされています。歯の動揺が認められ、硬いものが噛みにくいと感じるようになります。

ブラッシングで痛みを感じたり、歯肉からの出血があるため歯磨きをするのが辛くなります。歯周ポケットより膿が出てくる場合もあります。

歯周病の検査

まずは歯周病の検査を行います。
レントゲン撮影・口腔内写真撮影・カリオ検査(唾液検査)・歯周検査を行います。
この検査を元にコンサルテーションを行い、現状の説明及び治療計画のご説明を致します。

歯周基本治療

歯周基本治療は「歯周病の初期治療」です。 この初期治療で最も大切なのは、細菌などの感染源に出来る限り侵されない状態を作り出すことです。歯科医師・歯科衛生士による処置と患者様のブラッシングや生活集患の改善によって支えられます。

歯周外科治療

歯周基本治療で改善が見られなかった場合は、歯周外科治療を行います。 歯周外科治療は大きく3つに分けられ、フラップ手術(歯肉の内側の歯面を徹底清掃)・歯周組織再生療法(失われた土台を再築)・歯周形成手術(主に審美修復)があります。